管理人冬灯による日記です。
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「うーん、見た目も味もバランスが悪いわ。
ブルーベリー、もう少し良いものが手に入らなかったのかしら?」
しま子は華奢なフォークに突き刺したブルーベリーを見つめながら言った。
「仕方ないんじゃない?
いつも良いものが採れるとも限らないんだし」
「あらダメよ水玉。いつだって最高のケーキを提供するのがケーキ屋さんよ。
妥協なんて、ダメ」
僕の擁護もあっさりと切り捨て、
しま子は「イマイチ」の評を下した。
下しつつも、最後まで綺麗に食べるのがしま子である。
「ブルーベリーのケーキが食べたい」という彼女の為に
数件も回り一番気に入りそうなものを見繕った僕の苦労は、
果たして報われたのか否か。
そんなことを思いながら、
僕も「イマイチ」なケーキにフォークを入れる。
僕には細かな味の良し悪しなど分からない。
が、しま子の評価を聞いてしまっているので、
きっとイマイチなんだろうなと思う。
一番良いのはしま子が喜ぶもの。
良くないのはしま子が嫌いなもの。
曖昧だった僕の価値観は、
いつの間に彼女にくっきり線付けされていた。
それが良いか悪いか、
正しいか誤りか、
それは大した問題ではない気がする。
僕が最後の一口を飲み込むと、
しま子は「ごちそうさま」と笑って言った。
ごちそうさま、イマイチなケーキ。
僕も心の中で、そう続けた。
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