管理人冬灯による日記です。
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ふと思いついたから追記にネタメモ。
まだ未完成というか終わる気がしない。
最初と最後しか決めてなくて、中間がまだ埋まってないのですよ。
とりあえずゲームしたいので続きはまたいつか。
まだ未完成というか終わる気がしない。
最初と最後しか決めてなくて、中間がまだ埋まってないのですよ。
とりあえずゲームしたいので続きはまたいつか。
―明日、翼が生えるので、貴方に会いに行きます。だから、待っていて下さい。
そんなメールを最後に、彼女からの連絡は絶えた。
彼女とはネットの掲示板で知り合った。
ミチル、というのが彼女のハンドルネームだ。
文面を見る限り、柔らかい言葉遣いで好感が持て、
やり取りをしている内に妙にウマが合うことにお互い気づいた。
個人的なメールのやり取りをしよう、と言いだしたのはどちらからだったか。
とにかく、僕らはほぼ毎日のようにメールで話すようになった。
出会ったきっかけの本の話から、日常の些細な出来事まで。
どこに住んでるとかなんの職業だとか、そんな個人情報を知らせるのは顔の見えないネット上よくないとは思ったけど、
彼女になら話しても大丈夫だと思った。
それは彼女も同じなようだった。
彼女が話してくれた彼女のことは、本当かどうかは分からない。
けれど、僕は本当だと思いたかった。
彼女の言葉を見ている限り、彼女が嘘をつくような人には到底思えなかった。
そして、そう、僕は。
いつの間にか、ミチルに惹かれていたんだ。
会って話がしたい。
断られるだろうと思った提案を、彼女は拒まなかった。
けれど今は会えない、と彼女は言った。
まだ翼がないから動けないのだと、そう言った。
僕は初め、彼女なりに気遣って会えないと婉曲的に伝えられているのかと思った。
しかしそうではなく、彼女はどうやら本気のようだった。
―私もチルチルに会いたいよ。本当よ。
―じゃあ、どうして「翼がないから」って言ったの?
―だって、そうなんだもの。私には翼がないから、だから飛べないの。動けないの。
―僕だって翼はないさ。人間なんだもの。だから人は歩く、違うかい?
―ええ、そうね、人は歩けるわね。
―こんなの聞くのは失礼だと思うけど、もしかして君は足が悪いのかい?
―いいえ、今日も自分の足で歩いて散歩をしたわ。元気そのものよ。
―なら、どうして?
―ごめんなさい、チルチル。それでも私には翼が必要なの。ここから飛び立つための翼が。
貴方に会うためには、どうしても。
―そっか、分かったよ。なあミチル、もし翼を得たら、僕らは会えるのかい?
―ええ、もちろん!翼が生えたら連絡するわ。そうしたら、きっと、貴方に会いに行くから。
―楽しみにしてるよ。
―私も。
もしかしたら、翼というのは何かの比喩なのだろうか。
例えば、覚悟。勇気。そういった見えない力のこと。
それなら僕には翼があるだろうか。
この狭い籠から羽ばたくための、力となる心が。
最後のメールから一月が過ぎたある日、僕は決心した。
押入れにしまってたスポーツバックに簡単な荷造りをして、
プリントアウトした彼女からのメールを入れ、
僕は随分と久しぶりに、自分の部屋から出て行った。
電車の中にはほんの数人しかいなくて、静かな車内にカタンゴトンと単調な音が響いている。
都心のゴタゴタとした喧噪とは大違いだ。
彼女のメールから察するに、どうやら彼女は山に近い田舎町に暮らしているようだ。
名前の出ていた駅で降りると森の緑がなんだか眩しく、目を細めた。
僕がミチルのことで知っていることは少ない。
学生ではないということ、絵本を描いているということ、兄弟はいないこと、スープが好きなこと、
そんなことばかり。
顔も、実際の年齢も、住所も知らない。
名前ですらも。
それなのにここまできてしまった。
一体何を手掛かりに探すつもりなのか。
何も分からない、けれど、考えがあった。
彼女からのメールに綴られた、彼女の日常。
それを探そう、そうすればもしかしたら手がかりが得られるかもしれない。
僕は紙の束を左手に持ち、スポーツバックのずれを直して、歩き始めた。
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